アメリカ同時多発テロ事件でがん発生?
米ニューヨーク市の
世界貿易センター(WTC)で、2001年9月11日に発生したテロ事件。救助や復旧のためにがれきの中で作業をした人たちの追跡調査で、数種類のがんの発症率が高い傾向にあることが分かった。調査報告が12月18日、米国医師会雑誌に掲載された。
救助や復旧作業にあたったひとたちは、多発性骨髄腫や前立腺がん、甲状腺がんを発症する比率が高かった。ただし、がん全般での増加傾向は見られなかった。
世界貿易センターは1966年に建築を開始し、およそ6年の歳月をかけて竣工した110階建ての超高層ビル群。2001年に国際テロ組織アルカイダが、民間航空機をハイジャックして自爆突撃をし、大惨事となった。
(photo credit:
UpstateNYer via
cc)
発がん物質との因果関係は証明されず
作業の際に吸い込んだ粉じんや煙、粒子には、アスベストやシリカ、ベンゼンなどの発がん物質が含まれていると考えられる。作業にあたった消防士の大半は、一般の火災とは異なる臭いがあったと繰り返し語っている。
しかし今回の調査では、これらの物質が直接がんの発生に関わったとは証明されていない。調査対象データが2007~08年末の症例であるため、追跡期間が短いからだ。
調査報告を作成した疫学のコロンビア大学のスティーブン・ステルマン教授は
調査ではがんと世界貿易センターでの作業の影響との因果関係は特定されておらず、発がん物質にさらされた可能性について考察できるだけだ。今後、作業員たちが年齢を重ねれば、がんの発症率は自然に上昇する。時間がたつにつれ因果関係に関して専門的で統計的な調査が可能になっていくだろう
と語っている。前代未聞の大惨事に関わった人たちの精神的なダメージは計り知れないほど大きい。それに加え、健康への深刻な影響も懸念される。

Bloomberg
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MF95Y46JIJWA01.html