ヒトの顔が色々ある理由
「人は見た目が9割」(竹中一郎著 新潮社)という本があります。言葉以外の情報が持つ意味を考える、非言語的コミュニケーションの入門書です。
(画像は
Amazon.co.jpより)
見た目のなかで顔の占める割合は高くなっています。では、人の顔はどうしてこんなに違うのでしょうか。2014年9月17日、その疑問に答えた論文が「Nature Communications」に掲載されました。
カリフォルニア大学の研究は、人間の顔に個性があるのは複雑な社会集団における人違いを避けるためだったということを、遺伝子データ解析セットの研究とともに明らかにしました。
具体的には顔の特徴と体形質の測定指標を用いて検討した結果、顔が、手などよりも形状とレイアウトが個人の間で違ったということです。
アフリカ系とヨーロッパ系の人々の遺伝子データセットの解析では、顔の特徴に関連するゲノム領域の多様性が高いことも分かりました。
このゲノム領域は、ネアンデルタール人のものと類似していることも報告しています。
(画像はイメージです)
ネアンデルタール人の顔
丸谷才一の「綾とりで天の川」(文集文庫)のなかに
アメリカ人のストロースの「きみたちは典型的なネアンデルタール人に髭を剃らせ、ジョギング・スーツを着せて、ニューヨークの地下鉄に乗せたら、他の乗客がじろじろ見るとでも思っているのか」-丸谷才一著「綾とりで天の川」(文集文庫)より
という話が引用されています。
今回の文献はこれを遺伝子的に裏付けたことになります。
顔を区別することによって個体を区別するのは、動物学ではとても大切なことで、京都大学の霊長類研究所はニホンザルの顔を識別するためにあだ名を付けて、嵐山におけるニホンザルの生態を明らかにしたことは大変有名です。この伝統は今でも、嵐山のニホンザルの顔写真が一匹ずつ写真がアップしてあります。
Morphological and population genomic evidence that human faces have evolved to signal individual identity
Nature Communications 5, Article number: 4800 doi:10.1038/ncomms5800
http://www.nature.com/ncomms/2014/140916/ncomms5800/full嵐山ニホンザル識別表
http://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/Arashiyama/jm/index.html