生後の視覚体験が脳の視覚野に与える影響
2014年9月11日、自然科学研究機構 生理学研究所は視覚野の情報処理に必要な神経回路の形成は、生後発達期の視覚体験の影響を受けることをラットを用いた実験で明らかにしたことを明らかにしました。
(画像はイメージです)
なお、この研究内容はJournal of Neuroscienceで9月10日オンライン公開されました。
視覚の情報伝達
眼の網膜に移った情報は後頭部にある脳の一次視覚野に伝わります。一次視覚野で処理された後に高次視覚野に情報が伝わり、脳はものの形や色を判断します。
今回の研究内容
正常な視覚体験を経たラット、生後開眼したばかりのラット、暗室で飼育して視覚体験を持たないラット、明暗の変化はのみ経験しているラットの一次視覚野の神経ネット-ワークを比較しました。
(画像はプレスリリースより)
一次視覚の神経ネットワークは微小神経回路網からできています。微小神経回路網はシナプス結合を介して情報をやりとりする神経細胞のペアと、そのペアに情報を伝える周囲の神経細胞群からできています。
正常な視覚体験があると微小神経回路網は正常に形成していました。
開眼直後では微小神経回路網の形成は行われていません。暗室と飼育した場合には、開眼直後と同じ状態でした。
明暗の変化があると神経細胞のペアはできていましたが、周りの神経細胞群がペアに情報を伝える経路が未発達になっていました。
研究の意義
脳が正常に発達するためには、生後の視覚体験が必要であることを明らかにした今回の研究は、脳の情報処理メカニズムを解明することの一助になることを示唆しています。

生理化学研究所 プレスリリース
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2014/09/