光受容タンパク質による遺伝子治療
岩手大学工学部の研究グループは緑藻類ボルボックスから光受容タンパク質を開発し、遺伝盲ラットの網膜細胞が可視光を感知できるまでの視覚の回復に成功した。
(画像はプレスリリースより)
網膜の視細胞が障害されると光を受け取れなくなり失明する。現在、視覚を回復する治療法はないが、視細胞の障害に起因する失明の場合、網膜の他の神経細胞は残存している。
遺伝子治療で網膜の神経節細胞に改変型VChR1を導入すると、神経節細胞が光に反応し脳に視覚情報を伝達できる。
研究グループはすでに、視細胞変性による失明に対して、緑藻類クラミドモナスの光受容タンパク質を導入して視覚が回復することを発見している。ただし、この光受容タンパク質は青色の波長光しか感受できず、青色の物体しか見られなかった。
可視光に応答する光受容タンパク質
今回の研究では、緑藻類ボルボックスの光受容タンパク質の1つ、チャネルロドプシン 1(VChR1)遺伝子を改変して、青~赤色(可視光)に幅広く応答する光受容タンパク質を作製した。
これを盲目ラットの網膜細胞に導入した結果、その視機能が青~赤色の光に応答することがわかった。さらに青-黒、緑-黒、黄-黒、赤-黒の縞模様を呈示すると、行動学的評価では全色の縞模様を認識。
研究グループは、改変型VChR1遺伝子の導入で青~赤色のすべての色に応答する視機能が作り出せると考え、将来的に、改変型 VChR1 を利用した遺伝子治療で失明者の視覚を回復できると期待している。

岩手大学プレスリリース
http://www.iwate-u.ac.jp/oshirase/file/2115_0.pdf