色の判別
光は、眼の光受容細胞で電気信号に変換され、脳で情報処理されて色を感じます。この光受容体細胞の中には、「光センサー」として働く、オプシンタンパク質が存在します。
オプシンタンパク質はオプシン遺伝子に従って、合成されます。オプシン遺伝子の種類が異なると、感受性の異なる「光センサー」が合成されます。
ヒトは3種類(青、緑、赤)のオプシン遺伝子を有しています。これはいわゆる光の3原色と呼ばれるもので、各々の光の情報(強さ)が脳で情報処理され、様々な色彩を感じることができます。
ミツバチやショウジョウバエは紫外線に対応したオプシン遺伝子を有することから、紫外線を見ることができます。
トンボは、多数の小さな眼(個眼)が集まってできた複眼を持つ昆虫です。聴覚や嗅覚は退化しており、昆虫の中では視覚への依存が高いものの一つです。
研究内容
産業技術総合研究所、東京農業大学および総合研究大学院大学の研究者は共同で、1回の解析で数千万~数十億塩基対の塩基配列情報を得ることができる次世代シーケンサーを用いて、トンボの頭部で機能している遺伝子を解析したところ、多数のオプシン遺伝子が同定されました。
研究成果は、Proceedings of the National Academy of Science USAのオンライン版に2015年2月23日(現地時間)から公開されています。
個々のオプシン遺伝子は、幼虫と成虫のどちらか一方だけで使われていることが判明しました。さらに、成虫でも大部分の遺伝子は、複眼背側、複眼腹側、単眼周辺のどこか一カ所の領域だけで働いていることがわかりました。
このことは、幼虫は別としても、成虫となってからのトンボはいくつかのセットで、光を感知していることになります。
幼虫は、水中にいるので比較的視覚は必要ありませんが、成虫では、空中と地表を違うセンサーから認識していると想定できます。
余談
かつてシャコは12種類の光受容体を持つことから、驚異の色覚を持つと考えられていました。
ヒトは3つの光受容体から得た情報を脳内で処理して色彩という情報に翻訳しています。そのため豊かな色彩を感じることができます。
シャコの場合には12種類の光受容体を持っていますが、脳内での情報の翻訳作業が行われていないので、12の色彩として認識していることが2014年に分かりました。
トンボの色彩世界はどうなっているのでしょうか?今回の研究では空と地上を見やすいセンサーセットで見ていることまでは確実なようです。この研究がもっと早く発表されていればトランスフォーマーのトシオ・ブライド(ブライト)は第1巻でもう少し出番があったかもしれません。
(画像はプレスリリースより)
総合研究大学院大学 プレスリリース
http://www.soken.ac.jp/news/17995/文献:Extraordinary diversity of visual opsin genes in dragonflies.
http://www.pnas.org/content/early/2015/02/18/1424670112.full