光に対する反応が回復することを確認
理化学研究所が網膜変性末期のマウスにIPS細胞(人工多能性幹細胞)からなる網膜組織の細胞を移植し、光の感知機能を回復させることに成功しました。
網膜変性は、視細胞が加齢や遺伝的原因により強度の視力障害や失明に至る病気です。網膜は再生力が低い組織であり、現在人工網膜以外の治療はありませんが、神経細胞同士の情報伝達を行うシナプスが形成された報告はありません。
研究チームは2014年に、マウスのIPS細胞等で作成した網膜組織を網膜変性末期のマウスに移植し生着させることに成功しています。今回の研究により、網膜細胞と移植片内の視細胞が接触したことを確認しました。
ヒトへの臨床研究への応用に期待
網膜移植をしたマウスに光を当て5秒後に電気ショックを与える実験をし、発光した後5秒以内に反対の部屋に移動すれば、電気ショックを避けられるように学習させました。実験を繰り返した結果、移植後の網膜変性末期マウス21匹のうち9匹が光を感知していることを確認できました。
今回の実験では視野の5%ほどしか移植しておらず、より広い範囲に視細胞を移植すれば改善率が向上する可能性があるとしています。研究チームが目指している網膜変性の一種である網膜色素変性の患者に対する、IPS細胞由来網膜組織の移植治療の裏付け実験として大きな意義のあるものとなっています。
(画像は理化学研究所HPより)
理化学研究所 プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170111_1/