サッチャー錯視
顔が上下逆さになっていると、目や口に加えられた画像操作に気づかないことをサッチャー錯視と呼びます。下の画像は上下は同じ顔ですが、下の右側では目と口が逆になっていますが、上の逆さの写真ではその違いは分かりにくくなっています。
(画像はプレスリリースより)
産業技術総合研究所の研究
2014年10月10日、産業技術総合研究所と筑波大学 、京都大学と共同で、顔を逆さまにしたときの脳の働きをサルで検討した結果、逆さにしたときに顔を認識する脳活動に変化はないが、個体の判別や表情を読み取る働きが減少することを発見したことを明らかにしました。
この研究成果はJournal of Neuroscienceに9月11日(日本時間)に掲載されています。
「脳は見ているものが顔かどうかの認識に続いて個体や表情の情報を段階的に処理する」という知見に対して、サルを用いて神経細胞の変化を検討しました。
顔の逆さ提示によって、神経細胞が処理する情報のうち、顔の個体や表情の情報量が減少することが分かりました。
また、顔かどうかを認識する神経細胞と逆さ顔の影響を受ける神経細胞が異なることも示唆されました。
これはサッチャー錯視が起こる原因を脳の神経系の働きから明らかにしたものです。また、サルにおいてもサッチャー錯視が起こっていることも分かりました。
今後の研究
今回は顔の識別とその表情を読み取る神経細胞の活動が別のものであることが分かりました。
病床では人の顔が逆向きになっている場合があります。それが病人の認知に影響を与える可能性があります。画像センシング技術を利用した顔画像を正立させるシステムの有益性を指示するものです。

産業技術総合研究所 プレスリリース
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2014/nr20141010/nr20141010.html