網膜色素変性の進行を遅らせる
2014年8月6日、京都大学生命科学研究科、医学研究科眼科学教室とDaito Chemixらは、共同研究によって網膜変性の進行を抑制する効果を持つ物質を発見したことを発表した。
網膜色素変性
網膜視細胞の遺伝子異常が原因となり、視細胞が変成・脱落する症状。治療に関しては神経成長因子・遺伝子治療等が研究段階にあるが、進行を抑制する治療は確立していない。
今回の研究は神経細胞が大量にATPを消費することに注目して物質の探索を行った。細胞内ではVCPというATP消費タンパクがエネルギーを大量に消費することに眼をつけVCPを阻害することを条件として、化合物のスクリーニングを行った。
VCPを阻害する物質としてKUS121とKUS187が選択された。
(画像はプレスリリースより)
二つの化合物はストレス下にある培養細胞で細胞保護効果を示した。
網膜色素変性モデル rd10 マウスにKUS121あるいはKUS187を生後7日齢から25日齢まで腹腔内投与を行うと、視細胞の変性を抑制することが判明した。網膜電図検査にて視機能を保つことも確認。
今後の展開
VCPの阻害剤は、低栄養ストレスによる細胞の変性を抑え、網膜色素変性モデルマウスでも効果があることが判明した。
モデルマウスでは毒性は観察されていないが、今後は医薬品開発を目指して、製剤化、前臨床試験を経て、数年以内の臨床試験の開始を目指すとのこと。

京都大学 プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2014/140806_2.htm発表文献
Novel VCP modulators mitigate major pathologies of rd10, a mouse model of retinitis pigmentosa.
Scientific Reports 4, Article number: 5970 doi:10.1038/srep05970
http://www.nature.com/srep/2014/140806/srep05970/full/srep05970.html