角膜矯正治療の普及
レーザー照射を利用した「レーシック手術」や特殊コンタクトを夜間に装着する「オルソケラトロジー」など視力改善のための角膜矯正治療が今急速に普及している。
レーシックはレーザーで角膜を削り、光の屈折率を変えて視力を矯正。術後はメガネやコンタクトが不要となり、裸眼で生活が可能となるのだ。
以前は激しい運動に伴い接着面が外れる恐れが指摘されていたが、機器の進歩により、東京歯科大学水道橋病院(東京・千代田)のビッセン宮島弘子教授は「接着力を高められる」と話す。レーシック技術は安定した技術となりつつあるとの見方も強い。
コンタクトを装着して眠る
オルソケラトロジーは夜間特殊なコンタクトを装着して眠るだけの治療法である。コンタクトを装着している間、角膜中央部を凹レンズ化させ、光の屈折率をかえて網膜上に正常な焦点を結ばせるのである。軽度な近視ならば、昼間は裸眼で過ごすことができる。
同療法を日本で初めて導入した三井メディカルクリニック(東京・港、三井石根院長)は技術を独自に進化させている。強度な近視をも治療可能にし、過去10年間に8600人を診療。その80%近くが裸眼視力1.0以上に回復したという。
●レーシック
(メリット)
◎裸眼で過ごせる
◎視力の回復が早い
◎不衛生なコンタクトレンズによる感染症は起きない
(デメリット)
◎手術を受けると、やり直しがきかない
◎見え方の質が低下することがある
(夜間に光がにじんで見えるなど)
●オルソケラトロジー
(メリット)
◎昼間は裸眼で過ごせる
◎特殊コンタクトをやめれば角膜の形状を元に戻せる
(デメリット)
◎特殊コンタクトを毎晩装着する
◎強度近視は矯正できない
今後の課題
聖路加国際病院 眼科部長の山口達夫氏によれば、レーシック手術を受けた患者の15%は裸眼で1.0の視力を得られないという。また、レーザー照射で角膜の一部を削るため、一度手術を受けると角膜を元に戻すことはできない。夜間に光がにじんで見えるなどの後遺症例も報告されている。オルソケラトロジーも矯正効果を得るにはコンタクトを毎晩装着しなければならない。
銀座眼科での集団角膜炎感染も記憶に新しいところだ。山口氏は「銀座眼科の集団感染問題以降、レーシック手術を受ける患者の慎重さが増した。レーシックは医療行為であり ネイルアートのように手軽に受けられるものではないという自覚を促した形だ」と話す。
美容系クリニックの参入などで価格競争も激化している。10万円を切る施設も登場しているが、患者は術後のフォローアップ体制などもよく検討して施設を判断しなければならない。
東京歯科大学水道橋病院
http://www.tdc.ac.jp/hospital/sh/三井メディカルクリニック
http://mmc.ortho-k.co.jp/聖路加国際病院
http://www.luke.or.jp/日本経済新聞
http://www.nikkei.com/