「超広角コンプトンカメラ」で放射性物質の可視化に成功
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月29日、ガンマ線を放出する放射性物質の分布を目に見える形で撮影する装置「超広角コンプトンカメラ」を開発。放射性セシウムの分布を高精度画像化することに成功したと発表した。
この装置は、ガンマ線観測センサの技術を応用したもので、ほぼ180度の広い視野を有し、核種に固有なガンマ線を識別する能力を生かして、敷地や家屋に分布したセシウム137(Cs-137)やセシウム134(Cs-134)を画像化するカメラだ。
従来のピンホールカメラでは40度~60度の視野角しか有することができなかったが、今回開発されたカメラでは、広い範囲を捉えることができるため、人力計測が困難な屋根などの高所に集積する放射性物質も画像化できる。
飛躍的に検出精度がUP
セシウムから直接放出される核ガンマ線のエネルギー領域で、ガンマ線の相互作用から生じるコンプトン散乱を用いて入射ガンマ線の方向を察知し、可視化を行うのが「コンプトンカメラ」の原理である。
「超広角コンプトンカメラ」はコンプトンが散乱したガンマ線が、装置から逃げにくい構造となっているため、超広角の視野の確保に成功した。
今回の実験では局地的にガンマ線量の高いホットスポットの正確な位置特定を行う必要があるため、250ミクロンの位置分解能を持つ、
シリコンとテルル化カドミウムのストリップ検出器を施策した。今回の装置では特に、テルル化カドミウムの検出精度が、飛躍的に向上している。
また、測定に「ガンマプロッターH(Horizontal)」を用いて、放射線計測の実施と同時に、測定地点を衛生測位システム(GPS)と連動させたプロット機能で、かんたんに放射線量率マップを作成することもできる。
福島県飯舘村で実証実験
2月11日、JAXAと日本原子力研究開発機構(JAEA)、東京電力株式会社は、計画的避難区域に指定されている福島県飯館村草野地区で、「超広角コンプトンカメラ」を使った、実証試験を実施した。
測定は、飯館村公民館近くのスーパーと飯館村草野の綿津見神社近辺山林でおこなわれ、従来のガンマカメラに比べ格段に広い視野で放射性セシウム分布を見つけることに成功した。
MSN産経ニュースの記事によると、「超広角コンプトンカメラ」を開発したJAXAの高橋忠幸教授は
広い視野でセシウムの分布を短時間でとらえる画期的な技術だ。福島県内の除染に役立ててほしい
と語っている。

プレスリリース/宇宙航空研究開発機構(JAXA)
http://www.jaxa.jp/press/2012/03/20120329_compton_j.html